石垣窓/フリーボ
mail/ishigaki@geocities.co.jp
web/フリーボのホームページ
■ローラ・ニーロ/エンジェル・イン・ザ・ダーク
(Rounder 11661-3176-2)
97年に亡くなったローラ・ニーロが94年から95年にかけて録りためていた録音を集め た遺作。
音楽をサプリメントかなんかのように扱う、昨今の癒しブームにはうんざりだけど、 このアルバムにはマジで癒される。とても遺作とは思えない、みずみずしいうたに溢
れた、素晴らしいアルバムです。
バーナドー・パーディー(Ds)をはじめとする、名うての名手達のバックアップも見 事。もちろん洗練された名人芸・職人芸を堪能できる、ということもある。しかし、
それ以上に、ローラ・ニーロというひとりの女性から汲みあげられたうたに、それぞ れが感応し、呼吸を合わせ、演奏の間のつかの間、こころをひとつに通わせる、そん
な、「合奏」の根源とも言える、歓びと儚さが、ここにはある気がする。
ローラ・ニーロという人には、「孤独」「孤高」というイメージがある。けれども、 いや、それゆえ、うたを頼りに、仲間とこころを通わせて音楽を紡いでいるさまに、
何かとても救われた気分になる。
こう書くとなにか気軽に手に取れないアルバムのように思われるかもしれない。正 直、僕もこれまで彼女の音楽には敷居の高さを感じていた。でも、このアルバムは決
してそんなことはありません。心を落ち着けて、不思議とリラックスできる、素敵な アルバムでもあるのです。
■ボブ・ディラン/
LOVE AND THEFT
(COLUMBIA CK85975)
ボブ・ディランのニューアルバム。齢60、なんと通算43枚目(!)のアルバム。
かつてディラン&ザ・バンドが確立し、グラム・パーソンズが引き継いだ、アメリカ ン・ルーツ・ミュージックの発展的継承体としての”アメリカン・ロック”。ここ数
年、その精神を今に蘇らそうとする、スティーヴ・アール、ルシンダ・ウイリアム ズ、エミルー・ハリスといった人達の通称”オルタナ・カントリー”がひそかな注目
を集めていて、僕もすっかりハマっていたのだけど、これはまさに真打登場。
ロックンロール、ブルース、カントリー、ブルーグラス、フォーク、ウェスタン・ス ウィング、ジャズ。それぞれにもちろん美学や作法があって、でもしかしこれらは分
かちがたく同じものでもある、というアメリカン・ロックの「神話」を体現した素晴 らしいアルバムだと思います。この衝撃を例えるなら、カール・ゴッチがVTでノゲイ
ラに関節決めた、ってな感じでしょうか?(←違います)
今や悪声に磨きがかかったディランの歌声は、ほとんどゾンビの鼻歌。これはもう、 歌の味わいがどうこう、といった次元ではなく、体内に蓄積されたアメリカ音楽のエ
キスの、匂いたつ醗酵具合の物凄さを楽しむべきでしょう。
朝日新聞の夕刊で「芸の刻印〜修行者たち」って連載がはじまって、すごい面白いん だけど、ぜひ今度ディランも取り上げて欲しい。
60年代ロックの旗手が新たに確立した驚愕の60代ロック。などと親父ギャグがガマン できない31歳のオレはまだまだヒヨッコ。
■ルシンダ・ウイリアムズ/エッセンス
(Lost Highway/Universal 088 170 197-2)
98年の本コーナーで、前作をとりあげたルシンダ姐さん、待望の新作。前作は、間違いなく90
年代アメリカン・ロックが誇る大傑作でしたが、今回も待ったかいのある素晴らしい アルバムでした。
前作で驚愕のアンサンブルをきかせたルシンダ・バンドは、ドラマーの他界やギタリ ストとの決別があって、崩壊。今回はジム・ケルトナー(Ds)をはじめとした名うて
のセッションマンを従えて、グッとパーソナルでフォーキーな方向にシフトしていま す。結果、ブルースでもありカントリーでもありソウルでもある、独特の深い歌声の
「染みる」度は前作以上。少ない音数とシンプルな言葉遣いの「うたもの」の傑作と して、たとえばシャーデーと並べて聴いてもおかしくないようなアルバムです。
共同プロデューサーを努め、サウンド面でのカギを握るのは、前作でもイカしたギ ターを弾いていた、あのチャーリー・セクストン。ルーツ・ミュージックの肝をしっ
かりとらえた上で、サンプラーによるギターループなども駆使して、クールなサンド を組みたててます。ちなみに、彼は現在のディラン・バンドのリード・ギタリストで
もあり、上記ディラン盤でも大活躍。凄いぞチャリ坊。
■インディア・アリー/アコースティック・ソウル
(Motown 440 013 770-2)
アメリカン・ロック系が3枚続きましたが、実は今年最も良く聴いていたのが、いわ ゆるイマドキのブラック・ミュージック。キッカケとなった衝撃の2枚(「シャー
デー/ Lovers Rock」「ディアンジェロ/ Voo Doo」)はいづれも2000年作なので除き ますが、2001年のレコードにもいいのがいっぱいあって、楽しみました。
そのなかでも愛聴したのが、これ。モータウンが送りこむ期待の新人女性シンガーの デビュー作。大傑作!と大上段に構えて唱えるのは似合わない、爽やかでさらっとし
たアルバムですが、それゆえたくさん聴いた、というか。この、しっかり芯があっ て、なおかつさらっと流して聴ける感じが、今年のポイントでした。
サウンドはベタなタイトルのまんま。アコースティック・ギターの響きを生かしつ つ。太いボトムとキラキラした鳴り物が絶妙に配されたサウンドに、ややスモーキー
な押さえた歌声。ほんのりブルージー。なんてことないんだけど、いいんすよねぇ。
今のブラック・ミュージックで、全て生演奏ってのはほとんどなくて、「生」な手触 りとは裏腹に、リズムトラックは打ちこみが基本。ただそれだけに、生演奏のパート
には、必ず生の必然性がある気がして、耳が惹きつけられる。
そしてもちろん、リズム/グルーヴ。このアルバムに限らず、改めてリズムの面白さ とグルーヴの奥深さに気付かされました。
■マックスウェル/NOW
(COLUMBIA CK 67136)
こちらはセクシーなファルセットで近年人気の、男性シンガー。
個人的には1曲目の衝撃に尽きる。と言っても「衝撃」という言葉はあまり似合わな い、ライトでスピーディーなファンクなんだけど。とにかく絶妙な感じでヒットし
ちゃったのです。
プリンス似のファルセットもなかなか魅力的。そういえばプリンスの新作もなかなか 評判ですな。華やかに大復活してくれないかな。
【総括】
というわけで、2001年発売の洋楽新譜からセレクト。90年代後半は、70年代アメリカ ン・ロックの泥沼に迷い込んで、新譜は数えるほどしか買わなかったんですが、最近
また流行にのったりするのが楽しくて、新譜率も年々増えてます。
例年だと「インディーズ・マガジン」誌に「日本のインディーズ・ベスト5」っての を書いてたんですが、なんとその「インマガ」がなくなってしまったので、今年は書
けませんでした。ベスト1はもちろん
コモンビル/(この内容)coa sessions
フリーボは今年結局アルバムを出せませんでしたが、いろいろな音源に随分刺激をも らいました。唯一の新録音源で参加したニール・ヤング・トリビュート盤
V.A. / Mirror Ball Songs 〜 Tribute To Neil Young
これはフリーボも含め、すんごいいいアルバムでした。あんまり注目されなかったけ ど、ぜひ手にとって見てね。
ブランのアルバム作りをお手伝いできたのも、ほんとに楽しかった。ほんといいバン ドになったよね。阿達代表の粘り強い活動には敬服します。また一緒にやりましょ
う。
ベストライヴは
洋楽 AC/DC(横浜アリーナ)
邦楽 コモンビル(レコ発/渋谷エッグサイト)
AC/DCには10年分くらいのエネルギーを注入された。最高。
ベストバウトはPRIDEの藤田 vs 高山。
来年はもちろんフリーボをがんばります。
誰かの心のベストテンに入るよう願いながら。
ではでは、長くてゴメン。(2002.1.5)