サカテヨウスケ/DM研OB
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■天知茂の江戸川乱歩シリーズ/TVドラマシリーズDVD
(KIBF 3041〜継続リリース中)
今は昔、土曜日の午後9時35分頃といえば、毎週のように裸の女の人が浴室で殺される時代がありました。それはもちろんブラウン管の中の話。件の番組こそは「土曜ワイド劇場」であり、その猥雑なカラーを決定づけていたのが、今回ご紹介する、全25本の予定でリリース中の「江戸川乱歩の美女シリーズ」だったのです。このシリーズ、毎回「○○の美女」というタイトルが付くため「美女シリーズ」と総称されることが多
いのですが、個人的には主人公たる明智小五郎役の天知茂のイメージが強いので、「天知茂の乱歩シリーズ」と呼称させていただきます。中学生の頃から再放送されるたびにチマチマと録画していた作品群が、全作品を網羅してDVDシリーズ化された事を、DVD時代の慶事として、謹んで有り難く存じ上げている次第です。
探偵小説と推理小説の違い、あるいは本格物と変格物の区別というものは、もう半世紀も昔、甲賀三郎や木々高太郎の時代から激しい論争が繰り広げられており、今さら一介のサラリーマンが口を出しても詮無きことです。それを前提として、僕が乱歩作品に対して向ける眼差しは、博文館刊「新青年」時代の初期作品やポプラ社刊の子供向けジュブナイルではなく、「宝石」に大量掲載されていた、通俗探偵小説と呼ばれる頃
のイメージに他なりません。その文章の稚さ、子供っぽいプロットに大人向けの猥雑な味付けの、大量消費されても仕方のないような無数の作品群の雰囲気を、意図するとせざるとに拘わらず、当時の技術力でもってチープかつリアルに再現したのが、このTVシリーズであると言えるでしょう。
「シャワー中のお手伝いさんが刺殺」「服を着てる女の人が殺されると、傷口確認のために胸をはだける」などのお約束な展開もさることながら、何と言っても最も有名なお約束といえば、「キミは誰だ」と問われるや、ベリベリと顔の変装を引っ剥がす明智小五郎の姿。シリーズ放映から20年近く経った、1996年のアニメ「エルフを狩る者たち」でもパロディとして扱われるほど、非常に印象深い場面です。
横溝正史の作品は日本家屋的な開放空間の恐怖であり、江戸川乱歩作品は密室の閉鎖空間の恐怖であるという見方があります。このTVシリーズは舞台装置も小道具も、まさしく密室のソレであり、逃走や追跡場所も水族館や洞窟など、低予算枠内で再現可能。「土曜ワイド劇場みたい」「子供だまし」という非難じみたレトリックはむしろ的外れで、そのチープさこそが「宝石」時代の乱歩作品の持ち味だったのではないかと。そういった面を顧みることなく、むやみに予算を掛けて大袈裟な舞台装置をこしらえてみたり、あるいはそうした即物的リアリズムを要求する時代の流れが、後年の映像作品をして、その雰囲気を再現できなくしてしまったのでしょう。
また、後年の明智小五郎役の佐野史郎や陣内孝則、稲垣吾郎など、それなりの狂気芝居ができる人でも、天知茂が眉間の皺の奥に秘めていた優しさは表現していません。
それなりに優しさを滲ませていたのは、北大路欣也ぐらいでしょうか。元来、原作ですら明智小五郎はそれほど個性的な人物造形を為されていませんが、天知茂によってようやく「人間・明智小五郎」という像が結ばれたのではあるまいか。そんな人間・明智君が小道具として使用する、銀のシガレットケースにシガレットホルダー(パイプ)。
無機質な明智探偵事務所に広がる紫煙にダンディズムを感じた小学生当時の小さなお友達だった僕が、大きなお友達になって以来、その2つのアイテムを愛用するに至って、この作品との因縁を浅からぬ物と感じずにいられましょうか。
さて、日本人の精神は、記憶というものを少なくとも2種類に括る事が出来ます。則ち、西暦的な記憶と、元号(年号)的な記憶。芸術であれライフスタイルであれ、「1970年代的、80年代的」という括り方をする一方、「昭和の香りがする」「昭和50年代的」という記憶の位置付けが出来ることは、今更改まって言うほどの事ではないのかも知れません。元号の起源を辿れば政治的な意味合いもある事だし、他国との付き合いを考えれば非合理的との見方もできるので、元号廃止を唱える人がいるのも無理はありません。でも僕は元号を廃止して欲しくないんだなぁ。
日本では、幼少時から思春期に掛けての学校生活で、年号よりも元号を使用することが多い。従って、いわゆる「アノ頃の記憶」というのは、「1986年の記憶」ではなく「昭和61年の記憶」であり、年表などスケジュール的な記録に相応しい西暦よりも、日記的な記憶の染み込む元号の方が、よりウェットに感傷を呼び起こせるのではないだろうか。音楽番組「歌の大辞テン」が過去の歌謡曲を元号方式で表現しているのは、まさに元号独特のウェットな感覚を利用しているものでしょう。そうした意味で、僕は音楽やら映画に関して、「70年代モノ」「80年代モノ」より、「昭和50年〜60年代モノ」が好きだと自覚しています。もちろん、西暦で括る方が相応しいモノもありますけどね。
そうして僕の中には、古び始めた団地と洗濯物、土管のある野原、工場の煙、光化学スモッグ、チリチリパーマのオバチャン、そんな事柄と一緒に、「昭和50年代作品」としての「天知茂の乱歩シリーズ」があるのです。
■OUTO/OUTO
(SFCD-003)
1980年台に発表された音源のコンピレーション。日本のハードコアバンドとしては、ちょっと若手のイメージがありましたが、今や「伝説の」という肩書で語られても仕方ありませんなぁ。もう21世紀だしー。
当時(高校時代)はこういう、ドラムがスッポコスッポコと速いのは好みじゃなかったもんで、実は今まで「HARDCORE UNLAWFUL ASSEMBLY」とか「LAST
PUNK OSAKA」ぐらいしか音源を持ってなかったんですが、改めて聴き直すと結構イケルじゃんとばかりに、暇さえあれば聴いていたこの一年。音源によってバラつきがありますが、ドラムの音が目立つミックスが多くて、深めに掛けられたリバーブも心地よい。ミックスによっ
て全然印象が違うモンだなぁと、改めて感心いたしました。ギターの音にそれほど関心のない僕にとって、ギターを前面に出した「正直者は馬鹿を見る」のトラック群は、ちょっと残念。アレンジのイカしたV.A.「MY
MEET'S YOUR POISON」からの収録曲「RISE FROM THE DEAD」がフェイバリットであります。
■LIPCREAM/LIPCREAM'S
THRASH TIL DEATH
(ONI-7)
OUTO同様、コンピ作品からの音源集。宝島カセットブック「THE PUNX」からの音源が、今となってはレアなんでしょうか。ちなみにタイトルに含まれている「THRASH
TIL DEATH」というのは、当時のハードコア勢4バンドのコンピアルバムのタイトルです。
当時「高速ロックンロール」とも称されていただけに、PILL氏のドラムが持ち上げられるのはもっともですが、それより僕はナオキとミノルの弦楽器コンビが大好きで、二人の出身バンドThe
COMESと同様に、まったくの無批判で全肯定なのであります。いいじゃないか、同じアルバム中、同じギターソロの曲が3曲ぐらい入ってたって。
■不思議のダンジョン 風来のシレンGB2 砂漠の魔城/ゲームボーイカラー
これ、カートリッジだから「一枚」とは言えないんですが、2001年に遊んだゲームの中ではベスト作品だったので。「不思議のダンジョン」というシリーズは、以前「私の5枚1998」でご紹介した「街」と同じチュンソフトの作品で、基本操作はRPGながら、ダンジョンは毎回ランダムで生成されるし、死んだらアイテムもお金も無くなってレベル1からやり直しという緊張感と、なんか次回は絶対上手くいきそうと思わせて繰り返しプレイさせる絶妙のゲームバランスが魅力です。
他にもトルネコやチョコボなどを主人公とした作品や、このシレンだけでも何作も発表されてますが、ゲームボーイカラーという携帯性や、いつでも中断できる簡便性が、この「風来のシレンGB2」をシリーズ中で屈指の作品たらしめています。携帯機とは思えない緻密なグラフィックやアニメーションも魅力。「1000回遊べる」というのが謳い文句なだけに、中毒性が強く、コストパフォーマンスも非常に高い。あと、こりゃ評価の対象外ですが、学生時代の知り合い「風のように永田」氏(ファミ通編集者)の名前がテロップに流れるのも、個人的にポイント高し。なお、2002年2月には、「シレン外伝」なるものがドリキャスでリリースされます。
■ただのバケツじゃありま洗/洗濯機
一見ただのバケツに見えるのに実は小型洗濯機という、洗濯機用の排水溝がない我が家にとっては、まさに天が賜れた至高の一品。下着や靴下ぐらいなら余裕で洗えます。もちろん脱水機能なんぞありゃしないので手絞りですが、この寒空にコインランドリーに行く手間を考えたら、ンなもん屁の河童。どうしたワケか我が家にはランジェリードライヤーなる小型乾燥機があるので、居ながらにして快適乾燥。もう「サカテ、洗濯しろ」とか言わせません。イメージキャラクターのタヌキもなんだかお茶目。ここまで書いてハタと気付きましたが、こんな文章では「通販生活」のコピーライター試験で不合格になったのも無理はないと思った。まぁ筆記じゃなくて面接ですけど。募集してなかったし。
【総括】
またしても音楽から離れた生活に戻ってしまったので、セレクトは困難を極めました。なんとか洗濯機を「一枚」にカウントしたくて、「靴下一枚」などと詭弁を弄そうかとも思いましたが、すんでの所で思いとどまった辺りに、オヤジ化現象への抵抗を感じ取っていただければ幸いです。
ゲーム界では、生産中止されたドリームキャストのソフトラインナップ充実ぶりに大注目。「サクラ大戦3」「ファンタシー・スターオンライン」「セガガガ」「ゼロガンナー2」等々、これ一本あれば、と思わせる「心の作品」が数多くリリースされました。僕はセガ信者ではなく、サターン信者ですが、この一年ばかりはセガを心から暖かく見守ってしまった次第です。
(2002.1.20)